10 事件解決

 峰岸の愛人だという石野真美の証言によって、捜査は大いに前進したが、その一方、「青龍軒」の長内夫妻はまだ峰岸との関係を認めてなかった。山際たちの捜査では既にそれを確認してる為に、長内夫妻にそれを認めさせなければならなかった。それ故、山際は早速、長内夫妻から話を聴くことになった。
長内夫妻は浦上の方にある「若葉荘」という築二十年位の木造モルタルのアパートに住んでいたが、その「若葉荘」の長内夫妻の部屋を山際が訪ねると、長内夫妻が姿を見せた。
そんな長内夫妻に山際は峰岸の写真を見せては、
「この男性のことを知ってますかね?」
 と、訊いてみた。
 長内夫妻は少しの間、峰岸の写真を見やっていたが、やがて、正平が、
「知らない人物ですね」
 と言っては眉を顰めた。
 それで、山際は知美にそれを確認してみた。
 すると、知美も、
「知らない人物ですね」
 と言っては頭を振った。
 それで、山際は長内夫妻に、
「本当に知りませんかね?」
 と、念を押した。
 だが、長内夫妻は先程の返答を繰り返した。
 それで、山際はこの近くの雑貨店主が、峰岸が「青龍軒」に入って行くのを時々眼にしたという証言を話した。
 すると、正平は、
「そうでしたか……。でも、僕たちはいちいちお客さんの顔を覚えてはいませんからね」
 と、いかにもぎこちない表情と口調で言った。
 そう言われてしまえば、山際はそんな正平に反論するのは苦しいというものだ。
 それで、話題を変え、
「では、長内さんは『青龍軒』の営業をいつから再開するつもりですかね?」
 恩田の事件が発生してから、「青龍軒」のシャッターは下ろされたままだったのだ。
 すると、正平は、
「『青龍軒』は閉店しようと思ってるのですよ」
 と、いかにも十面顔を浮かべては言った。
「廃業ですか……」
 山際は呟くように言った。
「そうです。何しろ、あんな事件がありましたからね。ですから、店の評判が落ちたことは間違いないですからね。
 それに、うちの店は元々儲かってませんでしたからね。更に、あんな事件があれば、もううちの店は営業を続けていけないのは眼に見えてますよ」
 そう言った正平は幾分か寂しげであった。
 そう正平に言われると、山際は、
「そうですか……」
 と、いかにも神妙な表情を浮かべては言った。そして、
「で、長内さんは今後、どうやってお金を稼ごうと思ってるのですかね?」
 と、訊いてみた。
 すると、正平は、
「そのようなことまで、刑事さんに話す必要はないと思いますので」
 と、神妙な表情を浮かべて言ったが、その一方、「そんなプライベートのことまで訊くなよ!」と、山際のことを非難してるかのようでもあった。
 それで、山際はこの辺で長内夫妻に対する捜査を一旦終えることにした。
 峰岸と長内夫妻との接点を確認する為に長内夫妻から話を聴いたものの、成果を得ることは出来なかった。「青龍軒」の近くの店主の証言はあったものの、今のように長内夫妻に否定されてしまえば、それ以上強く出ることは出来ないというものだ。
 しかし、長内夫妻が嘘をついていることは分かっていた。
 それ故、その嘘をいかにして崩していくかが山際たちの今後の仕事となるであろう。
 とはいうものの、山際たちはその手段を見出すのに手古摺っていた。今までの捜査から、峰岸と長内夫妻が結託して恩田を殺し、峰岸が川村建設から横領した金の幾分かが長内夫妻に渡ったというのが、有力な推理となっていた。だが、その推理を裏付ける有力な証拠はまだ入手出来てなかった。
 とはいうものの、峰岸を追求することは可能だ。峰岸の愛人の存在を突き止め、その愛人は峰岸からマンションの家賃の負担だけでなく、毎月二十万の小遣いも受け取ってることが分かったからだ。
 それを受けて、峰岸が署に出頭を要請され、取調室内で峰岸に対する訊問が行なわれることになった。
 峰岸は取調室内で訊問を受けることに、しきりに不満を述べた。
 そんな峰岸に、山際は石野真美の存在を挙げ、そして、真美が峰岸の愛人であり、峰岸からマンションの家賃の負担だけでなく、月に二十万の小遣いを貰い、また、三百万もするトヨタの車を買ってもらったことを話した。
 すると、峰岸は既にそのことを真美が山際に話したということを真美から入手してた為か、何ら表情を変えずに、率直にそれを認めた。
 そんな峰岸に山際は、
「失礼ですが、峰岸さんは月にそれだけのお金を石野さんに渡すことが可能なのですかね?」
 と、些か嫌味を込めた表情と口調で言った。
 すると、峰岸は、
「そりゃ、可能ですよ」
 と、平然とした表情で言った。
「失礼ですが、峰岸さんの給料は幾ら位ですかね?」
 山際はそれに関する情報を既に入手していたが、とにかくそう訊いた。
 すると、峰岸は渋面顔を浮かべては、
「そんなプライベートのことまで話さなければならないのですかね?」
「ええ。話して下さい」
「何故ですかね?」
 峰岸は納得が出来ないように言った。
「我々は今、恩田さんの事件を捜査してるのですよ。そのことは、峰岸さんもご存知でしょうが」
「そりゃ、知ってますが」
 すると、山際は小さく肯き、
「で、恩田さんは会社のお金を横領したことが発覚したことを受けて自殺したというのが、峰岸さんの説明でしたが、その説明はどうやら誤ったものだと、我々は看做すようになりましてね。
 というのは、恩田さんは愛人を作り、その愛人を囲う為に会社のお金を横領したみたいなのですよ。そんな恩田さんですから、その犯行が発覚しても、自殺するような殊勝な人間ではないと我々は思ったのですよ」
 と言っては、小さく肯いた。
 すると、峰岸は、
「そんなことはないですよ。恩田さんは繊細な神経の持ち主でしたよ。それ故、会社からは懲戒免職となり、警察からは逮捕され、そのことが新聞に載ってしまえば、恩田さんはもう人生が終わったと看做し、将来のことを悲観して自殺してしまったというわけですよ」
 と、その峰岸の推理こそ真相を述べていると言わんばかりに言った。
 すると、山際は、
「それは、峰岸さんも同じではないですかね」
 と、些か皮肉を込めた表情と口調で言った。
「僕と同じ? それ、どういうことですかね?」
 峰岸はいかにも納得が出来ないと言わんばかりの表情と口調で言った。
「峰岸さんも石野真美さんという愛人を囲っていたじゃないですか! それ故、恩田さんと峰岸さんの立場は同じだということですよ」
 と、山際は峰岸の顔をまじまじと見やっては力強い口調で言った。
 すると、峰岸は、
「馬鹿馬鹿しい!」
 と、声を荒げては吐き捨てるように言った。
 そんな峰岸に山際は、
「違うのですか? 峰岸さんも不正な手段でお金を手にしては、愛人を囲っていたのではないですかね?」
 と、峰岸をまじまじと見やっては再び力強い口調で言った。
 すると、峰岸は、
「刑事さん! 言っていいことと、悪いことがありますよ! 刑事さんが今、言ったことが出鱈目だということが証明されれば、僕は刑事さんを訴えますよ」
 と、山際に挑むかのように言った。
「ですから、峰岸さんの給料をはっきりさせてくれないから、こういった疑いを持たれるのですよ」
 と、山際は捜査に非協力的な峰岸を非難するかのように言った。
 すると、峰岸は、山際から眼を逸らしては、
「ですから、そんなプライベートのことは答えられないのですよ」
 と、吐き捨てるように言った。
 そんな峰岸に山際は、
「実はですね」
 と言っては既に峰岸の給料のことを調べてある旨を話した。
 峰岸はそんな山際の話にじっと耳を傾けていたが、山際の話が一通り終わると、
「どうして僕の給料を調べたのですかね?」
 と、いかにも納得が出来ないように言った。
 そう言った峰岸に、山際は険しい表情を浮かべては、
「峰岸さんは恩田さん殺しの容疑者だからですよ」
「僕が恩田君殺しの容疑者? 馬鹿な!」
 峰岸は吐き捨てるかのように言った。
「ですから、峰岸さんが石野さんを囲っていたお金が何処から出てるのかというと、恩田さんと同様、会社から横領したお金から出てるのではないかと我々は思ってるのですよ。そして、その責任を恩田さん一人に擦り付ける為に、峰岸さんは『青龍軒』の長内夫妻と結託して、恩田さんを自殺と見せかけるようにして殺したというわけですよ。これが恩田さんの事件の真相というわけですよ!」
 と、山際はいかにも自信有りげな表情と口調で言った。正にこの推理こそ、恩田の事件の真相であると言わんばかりであった。
 すると、峰岸はいかにも真剣な表情を浮かべては、
「一体、何の証拠があるというのですかね?」
 そう峰岸に言われると山際の表情は曇った。確かにそれを証明出来る有力な証拠はまだ入手出来てなく、また、今後も得られそうな感触はなかったからだ。 
 それで、山際はいかにも渋面顔を浮かべては、言葉を詰まらせてしまった。
 そんな山際を見て、峰岸はにやっとした。その笑みは正に嫌味のある笑みであった。
 そんな峰岸に山際は、
「だから、お金ですよ。峰岸さんの給料では、石野さんを囲えないということを証明してみせますよ」
 と、まるで峰岸に挑むかのように言った。
 そんな山際に、峰岸は、
「刑事さん。僕のことを軽んじないで下さいよ。僕が給料以外に収入があると言えば、どうしますかね?」
 と言ってはにやっとした。その笑みは先程の笑みと同様、嫌味のある笑みであった。
 すると、山際の言葉は詰まった。それは、正に山際が思ってもみなかった言葉であったからだ。
 それで、山際は渋面顔を浮かべては再び言葉を詰まらせてしまった。
 そんな山際に峰岸は、
「刑事さん。僕はね。妻に内緒のお金があるのですよ。そのお金は僕の親父の遺産ですよ。親父はこつこつと貯めていたお金を僕に遺してくれたのですよ。その金額は五千万ですよ。僕はその五千万のことを妻に話してないのですよ。話すと、妻の為にもその五千万を使わなければならなくなりますからね。
 で、僕はいつかは愛人を持ちたいと思ってましたから、その五千万を密かに隠し持っていては、そのお金で石野さんを囲っていたというわけですよ。
 さあ! どうです、刑事さん! これで、僕の疑いは晴れましたかね?」
 と、眼を大きく見開き、ぎらぎらと輝かせ、山際に挑むかのように言った。
 そんな峰岸に山際は、またしても言葉を詰まらせてしまった。今の峰岸の言葉の真偽は、今の時点では何とも言えなかったからだ。また、それが偽としてもそれを偽と証明するにはかなりの時間が掛かるように思われたからだ。
 それで、山際は渋面顔を浮かべては言葉を詰まらせていると、そんな山際を眼にして、峰岸は薄らと笑みを浮かべた。そんな峰岸は、正に余裕を取り戻し、山際の訊問を何とかかわすことが出来たと安堵したかのようであった。
 すると、その時である。
「警部!」
 と、若手の小林刑事が山際と野田刑事と峰岸の三人しかいない小さな取調室に入って来た。そんな小林刑事は相当に興奮していた。
 そんな小林刑事に山際は、
「一体、どうしたんだ?」
 と、怪訝そうな表情で言った。
「長内さんが死んだのです! 長内正平さんがです!」
 そう小林刑事に言われると、山際は呆気に取られたような表情を浮かべては言葉を詰まらせてしまった。それは正に思ってもみなかった小林刑事の言葉であったからだ。
 それで、山際は、
「長内正平さんとは、『青龍軒』の長内正平さんのことかい?」
「そうです。『青龍軒』の長内正平さんです! その長内正平さんの遺体が長崎港で浮かんでいるのが見付かったのですよ」
 そう小林刑事が言うや否や、中年の女性が突如、取調室に入って来た。
 それで、山際はその女性に眼をやったのだが、その女性は山際の知っている女性であった。その女性は今、山際と小林刑事が話題にしている長内正平の妻の知美であったのだ!
 そんな知美はつかつかと山際と峰岸の間に置かれているテーブルの傍らにやって来ては、峰岸を指差し、
「あんたが、主人を殺したのね!」
 と、まるで阿修羅のような表情を浮かべては、声を荒げては言った。
 その知美の思いがけない言葉に、山際は呆気に取られたような表情を浮かべた。その知美の言葉も、正に山際が思ってもみなかった言葉であったからだ。
 そんな山際に構わず、知美は更に話を続けた。
「あんたは正にけちよ! けちんぼよ! 恩田さん殺しに協力してくれれば、二千万払うと言ったから、主人はあんたに言われた通り、あんたから受け取った青酸を恩田さんが食べたちゃんぽんに入れたのよ。つまり、主人はあんたとの約束をちゃんと守ったのよ。
 でも、あんたは約束を守らなかった。あんたは千万しかくれなかった。
 そのことを主人があんたに詰ると、あんたは主人と話をする為に主人を長崎港に呼び出した。そして、主人の隙を見て、あんたは主人を殺したのよ!」
 と、知美は阿修羅のような表情で、強く峰岸を非難した。
 すると、峰岸は、
「何を言ってるのですかね? 僕は何が何だか分からないですよ。それに、あなたは一体誰なんです?」
 と、いかにも澄ました表情で言った。
 すると、知美は、
「ふん!」
 と、吐き捨てるかのように言った。そして、
「あんたは遂に本性を出したね。あんたを初めて眼にした時から、あんたは信用出来ない男だと思った。そして、その私の勘はやはり当たったというわけね」
 と言ってはにやっと笑った。その知美の笑みは、知美のことを知ってる者でも今まで眼にしたことのないような不気味な笑みであった。
 そんな知美は携帯していたバッグから小さなボイスレコーダーを取り出すと、再生ボタンを押した。すると、そのボイスレコーダーの再生が始まったのだが、その録音されてる内容は何と、正平と峰岸との会話の遣り取りだったのである。
 そして、その内容は、正に峰岸の恩田殺しへの関与を決定づけるものであった。何しろ、そのボイスレコーダーには峰岸が正平に恩田殺しを持ち掛け、その報酬として二千万支払うという旨が鮮明に録音されていたからだ。
 これだけ決定的な証拠を突きつけられれば、もう峰岸は白を切ることは出来ないというものだ。
 案の定、峰岸は観念したような表情を浮かべては、徐々に真相を話し始めたのだ。
 そして、その峰岸の供述は、正に山際たちの推理通りであった。
 即ち、峰岸と恩田は経理部長、経理課長という立場を利用し、経費を水増しするとかいう手口を用いては会社の金を横領し、愛人を囲っていた。
 だが、その三年に及ぶ横領は遂に発覚してしまった。だが、その横領は恩田一人が行なったものと、会社では看做していた。しかし、調査が進むにつれて、峰岸の関与も発覚するに違いない。
 そう看做した峰岸は、横領を恩田一人の責任に擦り付ける為に、長内夫妻と結託しては恩田を「青龍軒」で殺したというわけだ。
 また、山際たちの推理通り、峰岸と長内夫妻は元来何の面識もなかった。そんな長内夫妻が営んでいる「青龍軒」で峰岸はたまたまちゃんぽんを食べた。そして、そのあまり美味しくない味と薄汚れた店内、また、その冴えない風貌の正平の様が妙に印象に残った。
 そんな峰岸と正平はたまたま飲み屋で一緒になってしまい、話をしてみると、妙に話が合った。それで、峰岸は度々「青龍軒」に足を運ぶようになった。すると、いつのまにか、峰岸と正平は親しい関係となってしまった。
 そんな正平に峰岸が恩田殺しの協力を依頼することは困難なことではなかった。だが、正平は安易には峰岸の依頼に首を縦には振らなかった。
 そんな正平を、峰岸はその報酬として二千万払うと約束し、そして、長内夫妻と恩田は全く接点がない為に長内夫妻が警察に疑われることは有り得ないと説得され、正平は遂に根負けしてしまい、恩田殺しに協力することを承諾した。何しろ、金のない長内夫妻の将来の見通しは全く立ってないという状況であった。それ故、峰岸が約束した二千万は長内夫妻にとって、この上もない魅力的なものであったのだ。
 そして、遂にその決行の日が到来した。それは、十一月十一日であった。峰岸はその日、恩田を「青龍軒」で打ち合わせがしたいと呼び出したのだ。
 恩田は何の疑いを抱くこともなく「青龍軒」にやって来た。恩田が来た時に店内には客はいなかった。そして、それは峰岸たちにとって幸運であった。何故なら、その方が恩田の死を一層神秘的に思わせると思ったからだ。
 そして、正平は峰岸との打ち合わせ通り、恩田が食べるちゃんぽんに峰岸から受け取った青酸を入れ、恩田を殺すことに成功した。
そして、峰岸が思ったように、恩田の死と長内夫妻、峰岸との関与を警察が暴くことは困難な状況となっていた。
 だが、峰岸と長内夫妻との間で、当初思ってもみなかったトラブルが発生してしまった。というのは、峰岸は当初、長内夫妻に二千万渡すと言ったのだが、横領が発覚したとなれば、今後、会社の金を横領することは出来ない。となれば、今後、愛人である石野真美に渡さなければならない金に困窮してしまうことは当然予想出来、少しでも出費を抑える必要が生じた。その結果、正平に千万にしてくれと、峰岸は出たのだ。
 だが、その峰岸の裏切りに頭に来た正平は、恩田殺しの真相を警察に話すと、峰岸を脅した。峰岸から手に出来る二千万でマンション購入を決めていた正平にとって、峰岸の裏切りは許せないものであったのだ。
 そんな正平に罵声を浴びせられてしまった峰岸は逆上してしまった。正に、峰岸の一存で何とでもなるような感じの取るに足らない輩と看做していた正平の反抗は、正に峰岸にとって耐え難いものであった。
 峰岸は気がついた時は、正平の首を峰岸のズボンのベルトで絞めていた。学生時代に柔道をやっていた峰岸が小柄な正平を絞殺することは容易いことであった。
 正平を殺してしまった後、とんでもないことをしてしまったと峰岸は思ったが、その一方、こんな禄でもない奴は死んで当然だという思いもあった。
 それはともかく、正平の遺体を峰岸の車のトランクに入れると、長崎港に正平の遺体を遺棄した。正平の死と峰岸との関係を証明することは無理だと、峰岸は看做していたのだ。
 しかし、まさか正平がこのような証拠を遺しているとは峰岸は思ってもみなかった。峰岸は正平のことを甘く見過ぎていたのだ。そう悔やんでも後の祭りであった。
 そして、この峰岸の自供により、恩田の事件は解決した。また、正平殺しも峰岸だということが証明されるのは時間の問題であろう。
 そして、それはさ程時間を経ずに証明された。
 そして、一年が経過した。
 だが、山際は今でも正平殺しを自供した時の峰岸の悔しそうな表情を鮮明に覚えていたのであった。

     (終わり)

この作品はフィクションであり、実在する人物、団体とはまったく関係ありません。また、風景や建造物などが現地の状況とは多少異なってることをご了承ください。 


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