エピローグ
因みに、小早川のマンションの中にあったメモ書きに、陳の住所と電話番号を記し、また、〈木島満男に気をつけろ! 木島満男は俺の命を狙ってるぞ!〉と、記したのは、小早川自身であった。何故なら、確かに小早川は陳にいつか殺されるのではないかという不安を抱いていたからだ。何しろ、陳は密入国して来た男だ。小早川はそんな陳に対して、過去にそう感じたことがあったので、そのようなメモ書きを遺していたのである。
また、木島満男とは、嘗て陳が用いていた偽名であった。
それ故、陳は無論、木島満男という名前のことを知っていたが、滝川たち警察にはその名前を知らないと白を切った。
それは何故?
それは、実のところ、陳は木島満男という偽名を用いていた頃、殺しを行なったのだ!
それ故、陳はその殺しを闇に葬る為にも、何としてでも陳は木島満男と無関係にしておきたかったのである。それ故、陳があっさりとピッキング強盗を認めたのも、その殺しを闇に葬る為でもあったのだ!
そして、その陳の殺しを小早川は知っていたのである!
また、沙知が何故小早川が死んだ頃、小早川と共に伊勢にいたかというと、確かにその頃、沙知は小早川と出来ていたのだ。
それ故、小早川が沙知に伊勢に行こうと誘ったので、小早川と共に伊勢に来たのだが、小早川が「甚兵衛」で伊勢うどんを食べていた時に、沙知の姿は見られなかった。
それは、小早川が沙知に「甚兵衛」の店主と話があるから、外で待っていてくれと沙知に言ったからなのだ。
ところが、その「甚兵衛」で、小早川は何故か死んでしまった。それは、正に沙知の予期しないことであったのだ。
だが、沙知は小早川の裏の顔を知っていた為に、また、沙知が警察に言ったように、面倒なことに関わりを持ちたくなかった為に、まるでその場を逃げるようにして去って行ったのだ。
そして、それ以上に、沙知は自らの子供を米倉の車に故意に撥ねさせたという事実が発覚することを恐れたのである!
(終わり)
この作品はフィクションで、実在する人物、団体とは一切関係ありません。また、建造物の構造や風景の描写等が実況とは若干異なってることをご了解ください。