エピローグ

「五月女さんには、申し訳ないことをしたな」
 本来なら、事件は解決したので、速水はもっと晴れやかな表情をしていてもよい筈なのに、速水の表情はとても曇っていた。というのは、生前の五月女を、由美殺し、京子ちゃん殺しで疑い、訊問をしたからだ。
 だが、結局、五月女の罪は何らなかったというわけである。
 そんな速水の心情を野村刑事は察したものの、
「確かにそうですね」
 と、速水から眼を逸らせ、速水に慰めの言葉を掛けようとはしなかった。
 因みに、京子ちゃんの事故は事件ではなく、事故であったというのが、速水たちの結論となった。マンションのベランダで遊んでいた子供が誤って転落し、死亡するという事故が後を絶たず、それ故、京子ちゃんの場合も五月女たちが眼を離していた隙に、誤って転落してしまったというわけだ。
 また、今回の事件を振り返って、速水たち警察の捜査は、まだまだ至らない点がいくらでもあるということを再確認した。
 それと共に、人間、特に、女性の怨念というものは、恐ろしいものだということを痛感したのである!

   〈終わり〉

  この作品はフィクションであり、実在する人物、団体とはいっさい関係ありません。また、遊覧船の構造や風景、建造物 などが、実際の状況とは多少異なってる点があることをご了解ください。  
 

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