エピローグ

 わきの事件は解決したといえども、気が収まらないのは、田中征二と中田勇二であった。何しろ、わき殺しの犯人と疑われたり、宝くじ泥棒が露見してしまったからだ。億万長者になる夢を失なってしまっただけではなく、住居侵入、窃盗という罪で逮捕されてしまうところだったからだ。
 もっとも、征二と勇二が初犯だということと、わきの事件に率直に協力したことから、今回に関しては、大目に見てくれるそうだ。しかし、生きた心地がしなかったのは、言うまでもないだろう。
 また、野田澄男は、征二と勇二以上に生きた心地がしてないことだろう。
 というのも、何とわきは既に遺言を書いていて、弁護士に預けてあるというのだ。
 それは、正に澄男にとって青天の霹靂であった。
 澄男はわきが死んだことで、顔では泣いていたが、心の中では笑っていた。澄男はこれでやっとわきの資産を自由に扱えると思っていたからだ。
 しかし、遺言があったとなれば、澄男に一円も入らない可能性があるのだ。何しろ、わきは友人には澄男には遺産を与えないと言っていたそうだからだ。
 そして、わきの遺言が後三日後に弁護士の手によって明らかにされるのだ。正に、今の澄男は、その遺言に戦々恐々としてることだろう。
 そんな澄男ではあったが、実のところ、大晦日の午後一時四十分頃、つまり、征二と勇二がわき宅を後にした後、わきの死体を眼にしたのだが、その後、わき宅を物色しては、三百万程の金を掻き集めていた。澄男がわきの死をすぐに警察に知らせなかったのは、わきの部屋を午後二時頃まで物色していた為に、それが露見することを恐れたからだ。
 最後に何故小楽崎がわきが宝くじを大量に買ったり、墓参りに行ったりすることを知っていたかというと、それはわきが小楽崎との賃貸借契約を結ぶ時に、わき自身が小楽崎に話したからなのだ。小楽崎がわきに関して征二と勇二に話したことは、全てわき自身から小楽崎が直に耳にしたことばかりなのだ。というのも、小楽崎は実のところ、わきの父親に似ていたとのことだ。それ故、小楽崎には親しみを感じ、わきはついプライベートのことを何だかんだと話してしまったのである。
 しかし、小楽崎は無論、そのような事実は知らなかったのである!

 (終わり)

   この作品はフィクションで、実在する人物、団体とは一切関係ありません。



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