プロローグ
ジングルベルの音楽が、街の中を鳴り響く。
クリスマスということで、街はいつもより、一層活気立っていた。
けばけばしいネオンが街の至る所を彩り、クリスマスツリーがまるで街路樹のように並べられていた。
街を歩く人の顔を見ると、何となく浮きたって見える。人々にとって、今が一年の内、最も華やいだ季節なのかもしれない。
歩行者天国となっている通りの真ん中辺りが、突如、子供たちの歓声に包まれた。一体、何事が起ったのだろうか?
どうやら、子供たちの固まりの中で、一際眼につくものの存在が、その原因らしい。
それは、サンタクロースだった。
艶やかな衣装を身に纏ったサンタクロースが、子供たちに愛嬌を振り撒いているのだ!
「サンタのおじさんだ! サンタだよ! サンタクロースだ!」
子供たちは口々に叫ぶと、サンタクロースはそれに応えたかのように踊り出し、その道化振りを見せ付けるのだ。子供たちは、そんなサンタクロースに擦り寄っては、握手を求めたり、衣装に触ったりするのだ。
正に、英雄に熱狂するかのように、子供たちはサンタクロースに歓声を上げるのだ。そして、サンタクロースは正に英雄のように、そのキャラクターを子供たちに見せ付けるのだ!
サンタクロースはしばらくの間、ジングルベルの音楽に音頭を取り、踊っていたのだが、やがて、潮が引くように、裏通りへと、姿を消して行った。
すると、子供たちの固まりは崩れ、それぞれの親の許へと散って行ったのであった。