8 思わぬ事実
宝田は小早川の姿を眼にすると、怪訝そうな表情を浮かべた。そんな宝田は、小早川が宝田に一体どんな用があるのかと言わんばかりであった。
そんな宝田に、小早川は、
「実は妙な事が分かりましてね」
と、渋面顔で言った。
「妙なこと? それ、どういったことですかね?」
宝田は、何ら表情を変えずに言った。
「我々は今、十月十三日に、豊平川の河原で死体で発見された持田春雄さんの事件を捜査し、宝田さんからも証言を得たのですが、宝田さんはその持田さんのことを全く知らない人物だったのですかね?」
と、宝田の顔をまじまじと見やっては言った。
すると、宝田は小早川から眼を逸らせては、何も言おうとはしなかった。
それで、小早川は、
「宝田さんは、持田さんのことをずっと前から知っていたのですね?」
「……」
「宝田さんには、みちるさんという一人娘がおられましたね」
「……」
「で、そのみちるさんは、F学園大生だったのですが、F学園大を卒業して二ヶ月経った頃、自殺されたのですね? 失恋の為に」
「……」
「で、みちるさんが失恋した相手は、持田さんだったのですね? 我々が今、捜査してる持田春雄さんだったのですね?」
そう小早川が言っても、宝田は渋面顔を浮かべては、言葉を発そうとはしないので、小早川は、
「どうして何も話してくれないのですかね?」
と、不満そうに言った。
すると、宝田はこの時点でやっと小早川を見やっては、
「どうして、刑事さんは娘と持田の関係に気付いたのですかね?」
と、小早川の胸中を探るかのように言った。
それで、小早川は黒沢咲子から入手した情報を話した。もっとも、黒沢咲子という名前には言及しなかったが。
そう小早川が言うと、宝田は再び小早川から眼を逸らせては、何も言おうとはしなかった。
そんな宝田に小早川は、
「で、宝田さんは持田さんから電話は掛かっては来なかったですかね?」
すると、宝田は、
「掛かって来なかったな」
「それは、間違いないですかね?」
小早川は念を押した。
「ああ。間違いないさ」
宝田は小さく肯いた。
「じゃ、宝田さんは中島公園で、持田さんと偶然に再会したのですかね?」
「……」
「その時に、宝田さんは持田さんに対する怒りが込み上げて来たのではないですかね?」
「……」
小早川の言葉に、宝田は何も言おうとはしないので、小早川は、
「そうなんですね」
と、宝田に詰め寄った。
すると、宝田は小早川を見やっては、
「もし、そうだとしたら、どうだと言うのですかね?」
と、まるで小早川に挑むかのように言った。
「ですから、我々は今、持田さんの事件を捜査してます。それ故、持田さんの事件の真相を明らかにしなければならないのですよ。
で、宝田さんには、持田さんを殺してもおかしくない動機があります。また、中島公園で、宝田さんは持田さんと顔を合わせた可能性があります。それ故、我々は宝田さんから改めて話を聴かなければならなくなったというわけですよ」
と、小早川は言っては唇を歪めた。
「そうですか。でも、僕は持田さんの事件とは関係ないですよ」
と、小早川から眼を逸らせては素っ気なく言った。
「そうですか。でも、納得が出来ないことがあるのですがね。それは、宝田さんは持田さんのことを知っていたのに、何故、それを我々に話してくれなかったのかということですよ」
と、小早川は納得が出来ないように言った。
すると、宝田は眼を大きく見開き、
「だから、それは、僕が似顔絵を描いた男性が、持田だとは思わなかったのですよ。何しろ、持田のことを眼にしたのは、かなり昔のことだったし、また、よく似た人物は、いくらでもいますからね」
と、宝田は開き直ったような表情を浮かべては言った。
「全く、持田さんだと思わなかったのですかね?」
「そりゃ、少し後になってから、何となく似ていたと思ったりはしましたがね。でも、やはり、そうではないと思いましたよ。
それに、もし、僕がその男性を持田だと思ったとしたら、その男性のことを警察に話はしませんよ。僕と持田の関係を警察が今のように調べ出し、僕のことを疑って掛かるかもしれませんからね。それ故、僕はそんな野暮なことはやりませんよ」
と、宝田は毅然とした表情で言った。
宝田にそう言われ、小早川は渋面顔を浮かべた。確かに、宝田の言い分は、もっともなことだと思ったからだ。
それ故、これ以上、宝田を訊問しても成果は得られないのではないかと思った。
それ故、この辺で、宝田に対する捜査を一旦、中断し、札幌中央署に戻ることにした。
すると、その時、田中治郎から電話が入った。田中治郎とは、「パラパラ」の待合室で、持田らしき人物を眼にしたと証言した人物である。
田中は小早川に、
―僕の証言は役に立ちましたかね。
と、興味有りげな声で言った。
「役に立ちましたよ。『パラパラ』のボーイの中で怪しいのが二人浮かび上がりましてね。それで、その二人を問い詰めたところ、自白しましたよ。
でも、その二人は持田さんを殺したのではなく、持田さんが自殺したのを幇助しただけだと、吐かしたのですよ」
と、小早川は些か不満そうに、事の次第を話した。
すると、田中は渋面顔を浮かべては、
―となると、持田さんが持っていた黒い鞄に入っていた千万は、自殺幇助の謝礼金として、その二人のボーイに支払われたというわけですかね?
「そう証言しましたね。我々としては、その証言を全く信じないわけでもないのですが、しかし、全面的に信じるわけにもいかないのですよ」
と、小早川は眉を顰めた。
ー信じられないというのは、どういった所ですかね?
「そりゃ、お金を払って、まるで面識のなかった人に、殺してくれ頼む人間がいますかね? 我々は、小心者だったと言われてる持田さんが、そのような大胆なことをやったとは思えないのですよ」
と、小早川は渋面顔で言った。
ーそうですか。で、僕が今日、電話したのは、以前言い忘れたことがありましてね。それで、電話したのですよ。
もっとも、事件にもう解決の目処が立ってるというのなら、話す必要はないと思うのですがね。
「いや。解決の目処は立ってないですよ。ですから、遠慮なく話してくださいな」
と、小早川は穏やかな表情と口調で言った。
―そうですか。では、話すことにしますが、実ですね。あの日、つまり、十月十二日の夜、僕が「パラパラ」の待合室で待っていた時、僕以外にも、二十代位の男性が一人いましてね。そして、その後、持田さんと思われる男性が入って来ましてね。で、僕はその後、小用を足す為に、トイレに向かったのですよ。すると、その時、僕は妙な場面を眼にしてしまったのですよ。
で、妙な場面とは、待合室と廊下は黒いカーテンで仕切られてるのですが、そのカーテンをボーイが少し開けては、中の様子をそっと窺ってるかのようだったのですよ。その様子は何となく不審げでしたね。
で、そのボーイの傍らには、七十を過ぎた位の男性がいましてね。で、その男性はボーイに、「そうだ。あの黒い大きな鞄を持った男だ」とか言っていたのを僕は偶然に耳にしてしまったのですよ。
僕はその男性とボーイの傍らをさっと通り過ぎたのですが、その言葉をはっきりと耳にしたのですよ。
と、田中は神妙な表情を浮かべては言った。田中は、その田中の証言が果して警察の役に立つのかどうか、分からなかったのだ。
だが、小早川は田中にそう言われ、思わず眼を鋭く光らせた。正に、今の田中の証言は有力なものに違いないと確信したからだ。正に、警察は常にこの田中のような男のことを待ち望んでるのだ!
田中が語ったその男性と宝田のことを当然、重ね合わせた小早川は、
「では、田中さんは、その七十を過ぎた位の男性の写真を眼にすれば、その男性だと証言してもらえますかね?」
―出来ると思いますよ。なかなか特徴のある容貌でしたからね。
「では、その男性は『パラパラ』の関係者だと思いましたかね?」
―そうですねぇ……。服装は明らかに「パラパラ」のものではなかったですが、ボーイとかなり親密そうに話していましたからね。でも、そうだからといって、関係者とは断言は出来ませんね。
でも、その男性は何となく芸術家風でしたよ。そんな印象を僕は受けましたね。
「芸術家風ですか」
と、小早川は険しい表情を浮かべては、小さく肯いた。芸術家といえば、やはり、宝田ということになるからだ。何しろ、宝田は中学校の美術の教員をやっていた。また、今尚、公園で似顔絵を描いてるような男性だ。その経歴が、否応が無く、宝田の面立ちを芸術家風に変容させているのだ。
しかし、宝田が何故、「パラパラ」にいたのだろうか? 宝田は時々、「パラパラ」で遊んでいたのだろうか?
「で、その男性の身体付きは、どんなものでしたかね?」
―身長は、165センチ位ではなかったですかね。体重は六十キロというところではないですかね。
そう田中に言われ、小早川は満足そうに肯いた。正に、それは宝田の身体付きそのものであったからだ。
そんな小早川に、
―服装もよく覚えていますよ。黒のズボンに灰色のジャンパーを着ていましたよ。
「そうですか。貴重な証言、ありがとうございました。
では、その男性と思われる人物の写真を送りますから、その人物がどうか、見てもらえますかね」
―お易いご用ですよ。
「で、それ以外に何か情報はないですかね?」
―特にないですね。
それで、小早川はこの辺で田中との電話を終えることにし、田中との電話内容を村木刑事に話した。
すると、村木刑事は、
「やはり、その男性は宝田さんの可能性が高いですね」
と言っては、小さく肯いた。
「そうだよな。となると、事件の概要は凡そ察せられるよ。
つまり、宝田さんは、『パラパラ』のボーイに持田さん殺しを依頼したんだよ。宝田さんが『パラパラ』のボーイと懇意だったとしたら、持田さん殺しを依頼し易いだろうからな。
宝田さんは持田さんの似顔絵を描いてる時に、やはり、持田さんであることに気付いたんだ。
それ故、中島公園から持田さんの後を密かにつけては、『パラパラ』の中に入ったのを確認すると、チャンスとばかりに、ボーイたちに殺しを依頼したんだよ。ソープの個室内なら、殺しはし易いだろうからな。また、宝田さんは自らの金を謝礼金として、田代と矢野に払ったのかもしれないな。つまり、田代と矢野は、持田さんの千万以外にも、宝田さんからかなりの金を受け取ったんだよ。つまり、矢野と田代は金に眼が眩み、事を成し遂げたんだ。また、自殺幇助のストーリーも宝田さんが考えたのかもしれないな。あの二人は頭が良さそうではないから、巧みな嘘は考え出せないよ」
と、小早川は正にそれが真相だと言わんばかりに言った。
「僕もその警部の推理に賛成ですよ。でも、宝田さんはそれを認めるでしょうかね?」
と、村木刑事は眉を顰めては言った。
「そりゃ、認めないだろうな」
「じゃ、どうするんですかね?」
「だから、田中さんの証言次第だよ。田中さんに送った五枚の写真の中から宝田さんの写真を選び出し、また、田中さんが証言した服で十月十二日に宝田さんが似顔絵を描いていたことが確認出来れば、宝田さんを追い詰めることが可能だよ。それ故、暴走族の海老原君にもそれを確認してみよう」
ということになり、直ちに田中に宝田の写真を含んだ五枚の写真を見てもらい、そして、その中から宝田の写真を選んでもらうことにした。
すると、田中は宝田の写真を選び出したのだ。
これによって、捜査は一歩前進した。
次に、小早川は海老原に連絡を取り、十月十二日に中島公園で似顔絵を描いていた男性の服装を訊いてみた。すると、黒のズボンに灰色のジャンバーのようだったと証言した。
その証言を受けて、村木刑事は、
「やりましたね」
と、いかにも満足そうな表情と口調で言った。
「ああ。これだけの証拠を入手出来れば、宝田さんを窮地に追い詰めたも同然だ。もはや、宝田さんが十月十二日の夜、『パラパラ』にいたということは、否定出来ないだろう。
とはいうものの、まだ、宝田さんが田代と矢野に、持田さん殺しを依頼したという証明は出来ないな」
と、小早川は渋面顔で言った。
「確かに警部のおっしゃる通りです」
村木刑事も渋面顔で言った。
そして、二人の間に沈黙の時間が流れた。正に、犯人を後一歩の所まで追い詰めたというにもかかわらず、最後の一手を見出せないのだ。
だが、やがて、村木刑事が、
「確かに、持田さんは宝田みちるさんの自殺の原因となった人物ですが、別に殺したわけではないのですから、宝田さんは何としてでも殺さなければならない相手だったのでしょうかね?」
と、些か納得が出来ないように言った。
「そりゃ、確かにそうだが……。しかし、みちるさんは、宝田さんにとって一人娘だったし、また、宝田さんの余命も長くないだろうから、思い遺すことがないようにと、自らの思いを成し遂げたのかもしれないよ」
と、小早川は村木刑事の疑問を一蹴するかのように言った。
そんな小早川に、
「宝田さんがみちるさん以外の件で、持田さんに恨みを持っていたということはないのですかね? つまり、みちるさんだけの件で、持田さんを殺すのは、動機が脆弱過ぎると思うのですが」
と、村木刑事は眉を顰めた。
すると、小早川は、
「宝田さんと持田さんは年齢的にもかなり離れてるから、宝田さんが持田さんをみちるさん以外のことで恨んでるという可能性は小さいだろう。
しかし、我々はまだ、持田さんと宝田さんのことを何もかも知ってるわけではないからな」
ということになり、この時点で、小早川は持田の姉であった柿沢理恵に電話をして、話を聞いてみることにした。というのも、持田が明美と結婚する以前の持田のことを知りたかったからだ。
すると、理恵は、
―父は、三年前に死んだのですが、札幌出身なんですよ。
そう言われ、小早川の表情は忽ち緊迫したものに包まれた。それは、正に思ってもみなかった情報だったからだ。
そんな小早川は、
「札幌出身ですか……」
と、呟くように言った。
―ええ。そうです。札幌です。働くようになって、東京に出て来ては、そのまま住むようになってしまったのですよ。
「そうですか……。で、今、生きておられたら、何歳位ですかね?」
―七十二歳ですね。
そう理恵に言われ、小早川は眼を鋭く光らせた。何故なら、宝田も七十二歳だからだ。年齢も同じで、また、札幌出身なら、持田の父親と宝田に接点があった可能性はある。
「では、お父さんは、札幌で中学校の美術の教員をやっていた宝田研三という人物に関して、何か言ってませんでしたかね?」
そう小早川が言うと、理恵は、
―その名前を父から聞かされたことはないですね。
そう理恵に言われ、小早川は渋面顔を浮かべた。
だが、理恵が知らないだけで、実際には、持田の父親と宝田に接点があった可能性はある。
そう思った小早川は、理恵に、持田の父親、即ち、持田秋夫の学生時代の友人のことを訊いた。
だが、理恵は秋夫の学生時代からの友人のことは分からなかった。
だが、住所が札幌近辺になってる友人のことは分かったので、その人物に小早川は問い合わせてみることにした。
すると、鈴木直也という秋夫と高校時代から親友であったという人物から、有力な情報を入手することが出来たのである。
―僕は、その中学校の美術の教師をやっていたという宝田研三という人物に心当りありますよ。
と、いかにも落ち着いた口調で言ったからだ。
すると、小早川は好奇心を露にし、
「どうして、鈴木さんは宝田さんのことに、心当りあるのですかね?」
―僕は持田さんからその宝田さんと思われる人物に関して、話を聞かされてるからですよ。
で、その宝田さんという人物が、持田さんにとってどういった人物であったかというと、それは、持田さんの恋敵であったみたいなのですよ。
と、鈴木は淡々とした口調で言った。
「恋敵ですか……」
小早川は呟くように言った。
―そうです。恋敵です。持田秋夫さんの奥さんになった人物は、元はといえば、宝田さんの恋人だったのですよ。その女性を持田さんは自らの奥さんにしたのですよ。つまり、宝田さんから見れば、持田さんは自らの女を強奪したということになったでしょう。
そう鈴木に言われ、小早川は眼を大きく見開き、好奇心を露にしては、
「成程。となると、宝田さんは持田さんのことを恨んでいたのではないですかね?」
―そりゃ、そうですよ。すごく恨んでいたみたいですよ。というのは、宝田さんは何度も持田さんに嫌がらせの手紙を出したり、時には猫の死体を送り付けて来たこともあるらしいですよ。
「そうですか。でも、心変わりしたのは、奥さんの方ですから、仕方なかったのではないですかね?」
―そりゃ、そうかもしれませんが、しかし、持田さんさえ現われなければ、奥さんの心が持田さんに靡くことはなかったでしょう。それに、人間の心とは、聖人君子のような人ばかりではありませんからね。
と、鈴木は言っては、小さく肯いた。
「そうですか。で、結局、嫌がらせはなくなったのですかね?」
―それが、なかなかなくならなかったみたいですよ。それで、持田さんは就職先を東京にしたのだと思いますよ。東京なら、宝田さんも追い掛けて来ることは出来ないでしょうからね。そして、その持田さんの読みは当ったったそうですよ。つまり、持田さんが東京に転居してからは、宝田さんの嫌がらせはなくなったみたいですよ。
「成程。で、持田さんと宝田さんは、元々知人関係にあったのでしょうかね?」
―あったそうですよ。また、持田さんの奥さんともあったそうですよ。というのは、その三人はS大の同級生だったそうですからからね。
「成程。で、その宝田さんは、今は中島公園で似顔絵描きをやってませんかね?」
―さあ、その辺のことは、よく分からないですね。
「では、鈴木さんは宝田さんの顔を確認出来ますかね?」
―出来ると思いますよ。持田さんから宝田さんの写真を見せられたことがあり、僕は今でもその顔を覚えていますからね。
それで、小早川は予め入手してあった宝田の写真を鈴木に見てもらうことにした。
鈴木宅にやって来た小早川から見せられた宝田の写真を一目眼にしては、
「間違いないと思いますね」
と言っては、小さく肯いた。
それを聞いて、小早川は些か満足そうな表情を浮かべた。これによって、捜査が一気に前進したからだ。
つまり、宝田はみちるのことで、持田春雄を憎んでいただけでなく、持田の父親も憎んでいたのだ。正に、持田父子は、宝田にとって天敵のような存在だったのだ。そして、今や、持田の父親がこの世にいなくなったとなれば、宝田の怒りが春雄一人に向かったとしても、それは不思議ではないだろう。
そして、これだけの動機があれば、宝田が持田を殺した犯人と看做しても差し支えないであろう。
何しろ、今や妻と娘に先立たれた宝田には、失うものは、何もないのだ!
後は、宝田と矢野と田代との関係だ。宝田が田代と矢野に持田殺しを依頼したとなれば、宝田が以前から田代と矢野のこと知っていた可能性がある。
そして、そのことが証明されるのには、さほど時間がかからなかった。死体遺棄の疑いで逮捕された田代と矢野のマンションが家宅捜索された結果、宝田の連絡先が記されたアドレス帳が二人の部屋から見付かったからだ。
それを受けて、小早川は田代と矢野を訊問したところ、田代が宝田と知人関係にあったことを認めた。田代は、中島公園で宝田に似顔絵を描いてもらったことから、宝田と知り合ったとのことである。
しかし、十月十二日の夜、宝田が「パラパラ」にやって来ては、宝田から依頼を受けて、持田を殺したということは、二人とも頑なに否定した。
それで、今度は宝田に会って、宝田を訊問してみることにした。