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やまなみハイウェイを長者原から阿蘇の方に向けて走ると、やがて、黒川温泉方面に右折する交差点に入るが、その交差点の少し前を左折すると、久住高原ロードパークへの道となる。そして、それは、やまなみハイウェイとは違って有料道路だ。久住高原ロードパークからの阿蘇五岳方面の眺めは、一見の価値があり、やまなみハイウェイをドライブすれば、この道も是非ドライブしたいものだ。
そして、東京から遥々阿蘇方面に観光旅行にやって来た前田利治(55)、明子(53)夫妻は、昨夜は阿蘇の内牧温泉のホテルで一泊し、今日は由布院の某ホテルに泊まる予定になっていた。そして、今日はまずミルクロードを走り、また、その周辺の牧場で時間を過ごし、やがて、やまなみハイウェイに入った。
そして、由布院目指して、車を走らせていたのだが、途中、久住高原ロードパークも走ってみることにした。久住高原ロードパークの先は、竹田へと続いく道となるのだが、今日は竹田へ行く予定は全くない。ただ、久住高原ロードパークという道をドライブしようと思っただけであった。
それはともかく、今日は朝から快晴という幸運に恵まれていたが、幸運は快晴だけではなかった。今日はウィークディということもあり、渋滞などまるで見られなかったのだ。
このことは、前田夫妻にとって、ありがたかった。日頃、東京でいつも渋滞を味わっているだけに、前を走ってる車が一台もないという快適なドライブは、前田夫妻にとって、甚だ快感をもたらしたのだ。
それはともかく、久住高原ロードパークを半分程走ったと思われる頃、手頃な展望台があったので、利治はそのパーキングに車を停めることにした。そして、車外に出ては、早速阿蘇五岳方面の眺望を愉しもうと思ったのだが、すると、その時、利治は突如、眉を顰めた。何故なら、五十から六十位と思われる男が、不自然な格好で倒れてるのを眼に留めたからだ。その様からして、男性は尋常ではないのは間違いなさそうだ。
そうかといって、この男性のことをこのまま放置しておくわけにもいかないだろう。
それで、とにかく、前田夫妻は男性の状態を確認してみることにした。
利治は男性の傍らに屈み込んでは、肩を揺り動かし、
「もしもし」
と、声を掛けてみた。だが、何の反応も見られなかった。
それで、男性を具に見ようとしたのだが、その時、利治は、
「ぎゃ!」
という小さな悲鳴と共に、後退りした。そんな利治の様は、とても尋常とは思えなかった。
それで、明子は、
「どうしたの?」
と、いかにも神妙な表情で言った。
すると、利治は、
「白目をむいてるんだ!」
と、いかにも驚いたような表情で言ったのだった。
そして、この時、前田夫妻は、この男性は既に魂切れてると、確信した。
というのは、男性に何の反応が見られないだけではなく、白目を剥き、更に、首には何かで絞められたような鬱血痕が見られたからだ。
即ち、この男性は何者かに首を絞められては殺され、この場所に遺棄されたのかもしれないということである。
前田夫妻はこの男性のことをこのまま警察に知らせないわけにはいかなかったので、携帯電話で直ちに110番通報したのである。