4 容疑者浮上

 長谷宅を訪れた愛川は、早速久子にインターネットのことを話すと、久子は、
「インターネットですか……」
 と、呟くように言った。
「そうです。和美さんはインターネットで和美さんと同じように自殺志願者がいることを知り、一緒に自殺したのではないでしょうかね」
 と、愛川は久子を見やりながら、落ち着いた口調で言った。
 すると、久子は、
「そうかもしれませんね」
 と、愛川から眼を逸らせては、小さな声で言った。
 すると、愛川は眼を大きく見開き、そして、
「ということは、和美さんはインターネットをやられていたのですかね?」
「ええ」
 久子は眼を愛川から逸らせては、呟くように言った。
「でも、僕が以前、和美さんの部屋を見せてもらった時に、パソコンは見当たらなかったのですがね」
「パソコンは私の部屋に置いてあるのですよ」
 愛川は久子から、和美が使っていたというパソコンを借りることにし、パソコンに詳しい捜査員によって、調べてみることになった。
 すると、その捜査は成果を得ることが出来た。何故なら、その和美が使っていたパソコンのお気に入りには、竹沢美智が作成したという自殺志願者を募るホームページが保存されていたからだ。
 そして、そのホームページには、〈一緒に自殺しませんか〉という題名で、このように書き込まれていた。
〈 私は竹沢美智という名古屋に住んでいる二十三歳の女の子です。最近、高校時代から付き合っていた彼氏に振られてしまいました。その彼氏が、私以外の彼女を作ってしまったのです。
 私はその彼氏と結婚するつもりだったのですが、こんなことになってしまって、私はショックに堪えられません。
 私はもはや生きて行くのが苦痛なのです。それで、もう自殺するしかありません。
 私と同じように、自殺したいと思ってる人はいませんか?
 もし、いれば、私と一緒に自殺しませんか。
 そう思ったら、私にメールを送ってください〉
 即ち、長谷和美は、このホームページで竹沢美智と知り合い、そして、一緒に自殺したというわけだ。
 とはいうものの、長崎太郎がこのホームページを見て、長谷和美や竹沢美智と知り合ったという証拠は、まだ入手出来てなかった。
 それで、愛川は長崎の妻であった長崎洋子から話を聞いてみることにした。
 愛川たちの推理を洋子に話すと、洋子は、
「インターネットですか……」
 と、渋面顔で呟くように言った。
「そうです。新宿駅で死んだ長谷和美さんと上野駅で死んだ竹沢美智さんは、竹沢美智さんが作った自殺志願者を募るホームページを見て知り合ったことが、既に確認出来ました。
 それ故、長崎さんもその竹沢さんが作ったホームページを見て知り合われたのではないかと思うのですよ」
 と、愛川は洋子に言い聞かせるかのように言った。
 すると、洋子は、
「うちにはパソコンはないのですよ。それに、携帯電話でもインターネットをやっていないので」
 と、渋面顔で言った。
 そう洋子に言われ、愛川は困惑したような表情を浮かべた。それは、正に意外な言葉であったからだ。愛川はてっきり、パソコンとか携帯電話で、長崎はインターネットをやっていたに違いないと思っていたからだ。
 それで、愛川は困惑したような表情を浮かべていたのだが、そんな愛川の困惑を一層深めるかのように、洋子は、
「それに、以前も言いましたが、主人は自殺するような人間とは思えないのですよ」
 と、険しい表情で言った。
 そう洋子に言われ、愛川の言葉は詰まった。 
 今回の事件は、見知らぬ者同士がインターネットで自殺志願者がいることを知り、そして、何故か東京駅、新宿駅、上野駅で同時刻に自殺したものだと、看做していたのだ。
 だが、洋子の話を聞くと、その推理は正しくないということになるのだ。
 それで、愛川は渋面顔を浮かべては、少しの間、言葉を詰まらせていたのだが、やがて、
「では、ご主人に恨みなんかを抱いていたような人に心当りありませんかね?」
 と、洋子を見やっては言った。
 すると、洋子は黙って頭を振った。
 今までの捜査から、長谷和美と竹沢美智は、インターネットで知り合い、意気投合しては自殺したものと思われるのだが、長崎はどうやら違うみたいだ。長崎は和美や美智とは違ってインターネットをやってなかったようだし、また、自殺しそうな気配はまるでなかったようなのだ。
 となると、長崎は何故、和美と美智と同時刻に、東京駅で和美や美智と同様、青酸死したのだろうか? もし、長崎が和美や美智と無関係なら、和美や美智と同時刻に東京駅で、和美や美智と同様、青酸死するなんてことは、有り得ないのではないだろうか。
 それ故、やはり、何かがあるに違いないのだ!
 しかし、それを愛川はまだ見出せないのだ!
 それで、愛川はその思いを洋子に話してみた。
 すると、洋子は、
「私も分からないですね」
 と、渋面顔で言った。
 だが、
「でも、主人は会社では、パソコンを使っていたと思います。それで、会社では、インターネットをやっていたかもしれません。
 それに、主人は従業員二十人という小さな会社ではありますが、一応社長をやってましたから、誰かに恨まれるようなことをやっていたのかもしれません」
 と、いかにも決まり悪そうに言った。
 そう和美に言われ、愛川は、
「成程」
 と言っては、小さく肯いた。確かに、洋子の言う通りだと思ったからだ。
 それで、洋子から長崎が勤務していた会社のことを聞き、その会社、即ち、長崎出版を訪ねてみることにした。
 長崎出版は、神田にある四階建の小さな古びたビルの四階に事務所を構えていた。
 愛川はそんな長崎出版の事務所に入り、事務長をやっているという岡田俊一という五十の半ば位の男性から話を聞いてみることにした。
 岡田は開口一番に、
「本当にびっくりしてるんですよ!」
 と、甲高い声で、興奮のあまりか、声を上擦らせては言った。そして、
「お亡くなりになられる前までは、社長はぴんぴんしてたのですから! ですから、僕は社長は自殺したなんてことは信じられませんね」
 と、長崎の死は自殺の可能性があると言った愛川のことを非難するかのように言った。
「となると、長崎さんは何者かに殺されたと言われるのですかね?」
 愛川は眉を顰めては言った。
「そうだと思いますね」
 と、岡田も眉を顰めては言った。
「では、その犯人に岡田さんは、心当りありますかね?」
「そう言われると、そこまでは分からないのですが……」
 と、岡田は決まり悪そうに言った。
 そんな岡田に、愛川は、
「長崎さんはこの会社内でパソコンを使っておられましたかね?」
「そりゃ、使ってましたよ。パソコンがないと仕事が出来ないですからね」
「では、長崎さんはそのパソコンでインターネットをやってましたかね?」
「そりゃ、やってましたよ。インターネットで色々と情報を入手してましたからね」
と、岡田はそんなことは当然だと言わんばかりに言った。
「では、長崎さんがインターネットをやっていたパソコンを捜査させてください」
「そりゃ、構いませんが、長崎さんは若い女性と一緒に自殺するような方ではないと思いますがね」
と、岡田は眉を顰めた。
 と、岡田は言ったものの、長崎がインターネットをやっていたというパソコンで、長崎が竹沢美智の自殺仲間を募るホームページを見てなかったかという捜査が行なわれた。
 しかし、その捜査は成果を得られなかった。
 長崎は長谷和美とは違って、インターネットで竹沢美智と知り合ったのではないようだ。
 それを受けて、愛川は冴えない表情を浮かべた。長崎の死を長谷和美の死と竹沢美智の死と関連づけることが出来なかったからだ。
 長谷和美と竹沢美智は、二人とも自殺志願者であり、美智のホームページによって知り合ったことは間違いないと、愛川は看做していた。
 しかし、長崎の死が、和美の死と美智の死とは無関係ということは有り得ないだろう。
 しかし、長崎のことを知ってる者の話だと、長崎は決して自殺するような人間ではなかったという。
 となると、他殺なのか?
 長崎の死が青酸によってもたらされたというのは、間違いない。
 もし、長崎が自殺したのなら、長崎が死んだ東京駅で、長崎は自らで青酸を飲んだということであろう。
 だが、殺しとなると、そうはいかない。長崎に青酸を飲ますという行為を行なわないと、長崎を青酸で殺すことは出来ないのだ。しかし、そのような不審な場面を目撃したという情報は入手されていないのだ。
 となると、長崎の死亡時刻に長崎の体内に青酸が入るという工作が行なわれてなければならない。
 となると、そのような工作が可能だろうか?
 そう愛川は自らに問いかけてみたが、それは深く考えるまでもない。その工作は充分に可能だからだ。
 即ち、カプセルだ。長崎が青酸入りのカプセルを青酸が入ってると知らずに飲めば、長崎が東京駅構内で死ぬということは可能なのだ!
 それで、愛川は岡田に,
「長崎さんはカプセルに入っていた薬とか栄養剤を飲んでいなかったですかね?」
 と、訊いてみた。
 すると、岡田は、
「飲んでましたよ」
 と、あっさりと言った。
 そう岡田に言われ、愛川は思わず表情を綻ばせた。
 即ち、長崎はいつも愛用してるカプセルにまさか青酸が入ってるとは知らずに飲んでしまい、そのカプセルが東京駅で溶け、青酸が長崎の体内に入り込み、その結果、長崎は東京駅構内で死んでしまったのである。
 これによって、長崎の死は殺しによってもたらされたとう可能性は一気に浮上した。
 それで、愛川は眼を大きく見開き輝かせては、
「では、長崎さんは何のカプセルを飲んでいたのですかね?」
「栄養剤が入っていたようなカプセルでしたね」
「何時頃、それを飲んでいたのですかね?」
「さあ……、詳しいことは知りませんが、何でも会社で飲んでる場面を時々眼にしましたがね」
 と、岡田は眉を顰めては言った。
「では、そのカプセルを長崎さんは何処に保管していたのでしょうかね?」
「さあ、それは分からないですね」
 と、岡田は幾分か表情を険しくさせては言った。そんな岡田は、軽率なことを言ってしまうと、岡田自身が疑われてしまうのではないかと、警戒してるかのようであった。
 それはともかく、誰が長崎のカプセルに青酸を入れることが出来たかというと、それは長崎のカプセルが何処に保管されていたのかを知ってる人物であろう。そうでなければ、入れ換えることが出来ないからだ。
「では、長崎さんは六月十日の午後五時半頃にお亡くなりになられたのですが、それまで長崎さんは何処におられたのでしょうかね? また、何処に行くことになっていたのでしょうかね?」
 と、愛川はそう訊いた。
「長崎さんはその日は、四時半頃まで、この事務所の中で仕事をしてましたね。そして、四時半頃、横浜にある取引先に向かったのですよ」
 と、岡田はその日のことを思い出すかのように、神妙な表情を浮かべては言った。
「成程。では、長崎さんはその日、何時頃、栄養剤を飲んだのでしょうかね? また、長崎さんの栄養剤が何処に保管されてるのか、知っていた人はいなかったのでしょうかね?」
 と、愛川は眼をキラリと光らせては言った。
 すると、岡田は、
「さあ、僕は長崎さんが栄養剤を飲んでいたことは知っていましたが、その保管場所のことは知らなかったですね」
 それで、愛川は岡田に訊いたのと同じような問いを、他の長崎出版の社員に訊いてみたのだが、愛川が必要としてるような情報は入手出来なかった。
 それで、愛川はこの辺で長崎出版を後にすることにした。
 長崎出版で聞き込みを行なった結果、長崎が栄養剤を飲んでいたという事実を突き止めたことは成果を得たといえるが、それ以外の有力な情報は入手は出来なかった。
 とはいうものの、愛川は自らに〈油断してはならないぞ!〉と言い聞かせた。何故なら、長崎出版の誰かが嘘をついているのかもしれないからだ。即ち、長崎出版の誰かが、長崎の栄養剤を青酸入りのカプセルに入れ換えたということである。
 長崎から毎日、強く叱責されたりすれば、長崎に殺意を抱くようになっても、不思議ではない。それ故、長崎出版の社員に関しては、更に捜査しなければならないであろう。
 また、長崎出版の社員と共に、注意しなけらばならないのは、妻であった洋子であろう。洋子なら、長崎が栄養剤入りのカプセルを飲んでいたことは知っていたであろう。それ故、洋子なら、カプセルの中身を青酸に入れ換えることは朝飯前というものであろう。それ故、洋子からはもう一度、話を聴かなければならないであろう。
 そう思った愛川は、再び町田市にある長崎宅を訪ねた。
 洋子は長崎を失ったショックの為か、以前と比べて、相当にやつれていた。
 そんな洋子に愛川は、
「ご主人のことで確認しておきたいことがあるのですが,ご主人はカプセルに入った栄養剤を飲んでおられましたかね?」
 と、洋子の顔をまじまじと見やっては言った。愛川は愛川の問いに洋子がどのように反応するか、具に見ようとしたのである。
 すると、洋子は何ら表情を変えずに、
「飲んでいましたよ」
「何と言う栄養剤ですかね?」
「V社のビタミン剤ですね」
「その栄養剤は毎日飲んでいたのですかね?」
「そうだと思います」
「毎日、何時頃飲むのか、決まってるのですかね?」
「ええ。大体、毎日、午後四時頃、飲んでいましたね」
「ということは、毎日、会社内で飲んでいたのですかね?」
「そうだと思います」
「ご主人はその栄養剤を何処に保管されてたのですかね?」
「主人の鞄の中ですね。その鞄の中には、その栄養剤以外にも、歯ブラシなんかが入った袋がありましてね。その中に入っていたと思います」
 そう洋子に言われ、愛川は、
「そうですか……」 
 と、呟くように言っては、小さく肯いた。
 洋子は愛川の問いに対して、何ら躊躇うことなく、返答した。そんな洋子を見てると、洋子には何ら後暗さは見られないと思わざるを得ない。だが、洋子をシロと断定するのは、早合点というものであろう。
 また、長崎出版の中には、長崎の鞄の中に、長崎が常用してるカプセルに入った栄養剤が入っていたことを知っていた者がいたという可能性は充分に有り得るだろう。それ故、長崎出版の者にも、疑惑の眼を向けなければならないのは、言うまでもないであろう。
 愛川はそう思ったのだが、そんな愛川に洋子は、
「でも、刑事さんはどうしてそのようなことを訊かれるのですかね?」
 と、怪訝そうな表情を浮かべては言った。
 それで、愛川はとにかく、長崎が青酸入りのカプセルを誤って飲んでしまい、死亡したという可能性に言及した。
 すると、洋子は険しい表情を浮かべては、少しの間、言葉を発そうとはしなかったが、やがて、
「長崎出版の中には、主人のことを恨んでいた人がいたかもしれませんからね」
 と、決まり悪そうな表情を浮かべては言った。
 そう洋子に言われ、愛川は言葉を詰まらせた。というのは、洋子は愛川が洋子に疑いを向けたことを察知し、それに関して何か言及するかと思っていたのだが、そういったことはまるでなかったからだ。
 それで、愛川は言葉を詰まらせてしまったのだが、そんな愛川に洋子は、
「私は今の刑事さんの話を聞いて、ピンと来たことがあるですよ」
 と、眉を顰めた。
 すると、愛川は興味有りげな様を見せては、
「それ、どういうものですかね?」
「以前、うちに押し掛けて来た女性がいたのですよ。主人はその女性に、私と別れるから付き合ってくれと言って、付き合っていたみたいですよ。
 しかし、後になってその女性は主人に騙されていたことを知り、うちに怒鳴り込んで来たということですよ」
 と、洋子は渋面顔で言った。
 そう洋子に言われ、愛川は、
「成程」
 と言っては、小さく肯いた。確かに、その女性なら、長崎に殺意を抱いても不思議ではないからだ。
 そう愛川は思ったが、洋子の話は更に続いた。
「その女性は、主人と男女の関係にあったと思います。それ故、主人が毎日、カプセルに入った栄養剤を飲んでいたことは無論、その栄養剤を何処に保管していたかも知っていた可能性がありますよ」
 と、いかにも険しい表情を浮かべては言った。そんな洋子は、長崎を殺したは人は、その女性である可能性は充分にあると言わんばかりであった。
 それで、愛川は、
「その女性は、何という姓名なんですかね?」
 と、眼をキラリと光らせては言った。
 すると、洋子は、
「原田美子とかいうような名前でしたね」
「では、その原田美子さんの連絡先は分からないですかね?」
「そこまでは分からないですね」
 洋子は愛川から眼を逸らせ、決まり悪そうに言った。
「じゃ、ご主人は原田さんとどういう風にして知り合ったのでしょうかね?」
 愛川はいかにも好奇心を露にして言ったのだが、洋子は
「それも分からないのですよ」
 と、再び決まり悪そうに言った。
 すると、愛川も決まり悪そうな表情を浮かべた。姓名だけしか分からないのなら、その原田美子という女性を捜査しようがないからだ。
 そんな愛川を見て、洋子は、
「でも、主人のことを恨んでると思われる女性は、その女性だけではないみたいなのですよ」
 と、眉を顰めた。
 すると、愛川は、
「ほう……。それ、どういった女性ですかね?」
 と、いかにも興味有りげに言った。
 すると、洋子は眉を顰めたまま、
「それが、名前なんかは分からないのですよ」
 と、いかにも決まり悪そうに言った。
 すると、愛川は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。それでは、話にならないからだ。
 だが、洋子は、
「でも、その女性の写真は持ってるのですよ」
 と、些か真剣な表情を浮かべては言った。
「写真をですか……」
 愛川は呟くように言った。写真があれば、その女性に行き着けないこともないと思ったのだ。
 だが、
「でも、奥さんは何故、その女性がご主人のことを恨んでいたと思ったのですかね?」
 と、興味有りげに言った。
 すると、洋子は、
「実は私がその女性の写真を見付けたのは、主人の机の引出しの中からなんです。主人が外出していた時に、たまたま見付けたのです。
 で、その女性は、若い女性だったのですが、裸でロープで縛られていたのです。その様はとても嫌がってるように私は思いました」
「その女性の写真を撮ったのは、ご主人であることに間違いないのですかね?」
「そうだと思います。主人と共に写っていた写真もありましたから」
「成程。でも、ご主人はその女性と合意の下で、そのような関係となったのではないですかね?」
「いいえ。そうは思いません」
 と、洋子は頭を振った。
「どうしてそう思われるのですかね?」
「主人は醜男で、女性にもてるようなタイプではなかったのですよ。また、けちだった為に、金で女性を囲うというようなこともやらなかったのです。
 それで、その女性の弱みなんかにつけ込んで、その女性を無理やりものにしたのではないかと思うのですよ」
 と、洋子はいかにも言いにくそうに言った。そんな洋子は、まるで、長崎の恥は洋子の恥であると言わんばかりであった。
「成程。ということは、今、奥さんが言われた二人の女性も、長崎さんを殺した可能性があると思われてるのですね?」
「まあ、そういうわけですよ」
 と、洋子は決まり悪そうではあるが、小さく肯いた。

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